外扇モーターがうなりをあげる地下鉄線、僕の脳内はガンマ線に破壊されていた。
耳は現代音楽で破壊し、目はブルーライトで疲弊しきっていた。
僕の地元のポンコツシティには今日もブリブリ言わすトラックが走る、そんな家は6:30に捨ててきた。
今日は鍵をちゃんと閉めたかな、エアコン消したかな、火をちゃんと消したかな窓をちゃんと閉めたかな、水道は大丈夫かなと不安になる8時15分
窓際族の僕は窓のない納戸のような部屋で8時間幽閉され、仕事を終える。(仕事なのか?)
今の仕事は本当に窓際族である。0.5人いれば十分なところに投入された私は0.5人分の仕事しかしなくていい。
帰りの電車。中距離電車で立ち客の酔っ払いが片手に氷結を持っていた。彼は電車の揺れに揺られ吹っ飛んで死んでしまった。
僕の携帯はジョージ・W・デロングやエドゥアルト・フォン・トルといった、北極海への探検中に氷河中に消えてしまったり広大な自然のもとに死んでしまった哀れな探検家たちの記事を表示していた。
あと4駅で着く。僕の脳内は今や北極圏のノヴァヤゼムリャで核実験が行われていた。
つまり流石にWikipediaの情報に疲れていた。あとやることが残っている。メルカリで小銭稼ぎである。表向きは丁寧な暮らしをしているので、夜ご飯も作らなければならない。風呂も湯船まで浸かり、明日に備えるのである。完璧。
完璧なていねいな暮らしである。
朝は5:30に起き、ストラテラちゃんに助けられ超高速で家事をこなし、仕事は白い目で見られながら定時にあがり、夜はご飯を作りお風呂に浸かる。22:00に寝るのである。
僕がストラテラを飲まなきゃ常人になれないことを除いては完璧である。将来のことは何も考えていない。明日のご飯と一台の原付があれば十分である。
実際はそう言い聞かせているだけである。結婚まで考えた恋人を疲弊させ愛されなくなった。私の愛だったのか?依存だったのか?
またマッチングアプリをやろうにも、各種アプリの僕のアカウントはブログの宣伝スパムで凍結していた。
明日のご飯と、築四十年の中古マンションと、一台のバイクでは僕の人生は物足りなかった。昔は勉強に頭をフル回転させていた僕の頭は、今や空っぽだった。
僕の人生には、恋人もストラテラもエビリファイも必要であった。
ああエビリファイよ、僕を助けてくれ。自殺したくなくなるぐらい元気にしてくれ。
ああストラテラよ、君の効果なのかわからんが最近は大好きだった鉄道も嫌いになってしまった。
ああ恋人よ、もう一度許してほしい。僕はあなたがいなければ生きていけない。
ああバイクよ、僕の手となり足となってほしい。君が走れなくなるその日まで永遠に私のものだ。
わがままをやめなければ。